国土交通省は7月1日から、トラック事業者など自動車運送事業者に対する行政処分で、車両使用停止処分の日車数を引き上げる。改善基準告示で定める1カ月の拘束時間(最大320時間)を超えた場合、10日車を加算。使用を停止しなければならない車両数の割合も、日車数に応じて最大5割に高める。事業者が独自で取り組める「働き方改革」を促すとともに、ドライバーの過労運転を防ぐ。(土屋太朗)

3月30日、行政処分基準に関する通達改正を行う、と発表。2月20日に公表した改正案では、5月1日からの施行を予定していたが、改善基準告示違反時の処分内容を大きく変更し、事業者に周知する必要が出てきたことから、スタートを2カ月延ばした。

当初は、改善基準告示違反が6~15件の場合、車両停止処分を現行の10日車(初回違反時)から2倍の20日車に引き上げることを想定していたが、これをやめて原則、現行基準を維持する。
その上で、1カ月の拘束時間と休日労働の規定に違反していた場合には、処分日車数を加算。改善基準告示では、拘束時間が最大320時間、休日労働は2週間に1回と、それぞれ決められており、これらの未順守が1件あれば10日車、2件以上では20日車を加え、現行基準よりも処分を重くする。
当初案で示した処分量定を改め、こうした措置に切り替えた背景には、荷主の都合で改善基準告示に違反してしまうトラック事業者への配慮がある。そのため、事業者が独自に改善できる拘束時間、休日労働の違反に焦点を絞った。

一方、健康診断未受診や社会保険未加入に対する厳罰化の内容は、当初案から変更しない。現行では、全体のドライバー数を把握した上で、対象者の割合に応じて処分内容を決めているが、新基準では対象者の人数で判断。初違反の場合、未受診者や未加入者が1人の時は「警告」、2人で20日車、3人以上では40日車とする。再違反の場合は、1人でも10日車となり、2人、3人以上のケースではそれぞれ2倍に増やす。

 

 使用停止車両の割合は、処分日車数に応じて最大5割に高める。例えば、処分が150日車の場合、現状では保有車両10台の事業所で2台を75日間停止していたところを、7月からは5台を30日間使用できなくする。また、保有台数が同じ事業所でも、処分日車数の多い事業所の方が割合が高くなる仕組みとする。

当初案に対する意見公募では「使用停止車両の最大5割への引き上げは、事業停止に近い処分となり、荷主への迷惑・損失が大きい」として、緩和を求める声が上がった。これに対し、同省は「これまでは車両規模に対して停止する車両の割合が小さく、処分の実効性が無いのでないか――との指摘もあり、必要な措置と考えている」との見解を示している。

また、10月1日からは、適正化事業実施機関による巡回指導で①総合評価が著しく悪い②新規参入後の総合評価が継続して悪い③健康診断受診や社会保険加入に関する法令未順守状況が継続的にみられる――事業者に対し、重点的に監査を実施する

 

(物流ニッポン2018.4.5記事より)