令和7年4月1日施行 改正貨物自動車運送事業法【実運送体制管理簿の作成・情報通知の義務化】徹底解説|運送事業者必見

令和7年4月1日施行 改正貨物自動車運送事業法【実運送体制管理簿の作成・情報通知の義務化】徹底解説|運送事業者必見

令和7年4月1日、貨物自動車運送事業法が改正され、運送事業者の皆様にとって重要な変更点が施行されます。その中でも特に注目すべきは、「実運送体制管理簿」の作成と、それに関する情報通知の義務化です。この改正は、多重下請構造の是正、実運送事業者の労働環境改善、そしてより安全な輸送体制の構築を目的としており、運送事業者の皆様は、この変更に適切に対応していく必要があります。

本記事では、改正貨物自動車運送事業法における実運送体制管理簿の作成・情報通知義務化のポイントを、運送事業者の皆様に向けて分かりやすく解説します。この義務化の内容を正しく理解し、必要な準備をスムーズに進めることで、法令遵守はもちろんのこと、事業の持続可能性を高めることにも繋がります。ぜひ最後までお読みいただき、今後の事業運営にお役立てください。

改正貨物自動車運送事業法の背景と目的

今回の貨物自動車運送事業法の改正は、運送業界が直面する深刻な課題を背景に実施されたものです。具体的には、ドライバーの高齢化と人手不足、燃料費の高騰、そして依然として存在する多重下請構造による不透明な取引などが挙げられます。これらの課題は、運送事業者の経営を圧迫するだけでなく、輸送の安全性や労働環境の悪化にも繋がる問題です。

このような状況を踏まえ、今回の法改正では、荷主と運送事業者の責任を明確化し、多重下請構造の是正と取引の透明性を高めることが重要な目的とされています。また、実際に運送を行う実運送事業者の安全確保と労働環境の改善を図り、より安全で持続可能な物流の実現を目指しています。

実運送体制管理簿の作成と情報通知の義務化は、まさにこれらの目的を達成するための重要な施策のひとつです。下請構造の透明性を高め、関係者間で情報を共有することで、安全管理体制の強化や責任の所在の明確化を図ることが期待されています。

実運送体制管理簿の作成義務化とは?

実運送体制管理簿とは何か?

実運送体制管理簿とは、元請事業者(荷主から直接運送を引き受けた事業者)が、実際に運送を行う事業者(実運送事業者)に関する情報を記録・管理するために作成する帳簿のことです。この管理簿の作成は、多重下請構造における責任の所在を明確にし、安全管理体制を把握することを主な目的としています。

誰が作成する必要があるのか?

実運送体制管理簿の作成義務を負うのは、荷主から直接運送を引き受けた元請事業者です。これは、自社で車両を保有し運送を行う事業者だけでなく、自社では運送を行わず、他の運送事業者に再委託する場合も含まれます。つまり、荷主との間に運送契約が存在するすべての事業者が、再委託先である実運送事業者の情報を管理する必要があるということです。

実運送体制管理簿には何を記載する必要があるのか?(具体的な記載事項例)

  • 運送区間(出発地、到着地)
  • 貨物の内容
  • 実運送事業者の商号または名称
  • 実運送事業者の請負階層(一次請け、二次請けなど)

※既存の配車表の活用など、事業者が取り組みやすい形で作成してください。
 電磁的記録での作成も可能です。

いつから作成が必要になるのか?

実運送体制管理簿の作成義務は、令和7年4月1日以降に開始する1.5t以上の貨物自動車運送が対象となります。実運送体制管理簿を作成し、適切に管理する必要があります。
実運送体制管理簿は、運送を完了した日から1年間の保存が義務付けられています。

実運送体制管理簿に関する「情報通知の義務」について

実運送体制管理簿を作成するためには、「実際に荷物を運ぶ運送事業者(=実運送事業者)」の情報を元請け会社が正確に把握しておく必要があります。

そのため、運送業務が複数の会社にまたがる場合でも、元請けから下請け会社、さらにその先の会社へと必要な情報が順番に伝えられるようにする義務があります。

また、元請け事業者は、その運送が「実運送体制管理簿の作成対象」であることが分かっている場合、運送を依頼する時点で、必ずその旨を下請け会社に伝える必要があります。

情報が正しく伝わることで、誰が実際に運送を行ったのかが明確になり、適正な管理や責任の所在がはっきりするようになります。

運送事業者が対応すべき具体的な準備

  • 社内体制の整備:
    • 実運送体制管理簿の作成・管理、および情報通知に関する責任者を明確に任命しましょう。
  • 荷主・協力会社との連携:
    • 荷主や協力会社(下請事業者)との間で、実運送に関する情報共有の方法やタイミングについて事前に協議し、明確なルールを定めておきましょう。
    • 必要な情報を提供してもらうための依頼方法や、自社から提供する情報の形式などを相互に確認しておきましょう。
    • 既存の運送契約についても、今回の法改正に対応した内容に見直す必要がある場合があります。
  • 従業員への周知・教育:
    • 今回の改正貨物自動車運送事業法の概要と、実運送体制管理簿の作成・情報通知の義務化について、全従業員に周知徹底しましょう。
    • 実運送体制管理簿の具体的な作成手順や、情報通知の方法について、担当者への教育をしっかりと行いましょう。
    • 法令遵守の重要性を改めて認識させ、意識向上を図りましょう。

まとめ

今回の改正貨物自動車運送事業法における実運送体制管理簿の作成・情報通知の義務化は、運送事業の透明性を高め、より安全で健全な業界へと発展していくための重要な一歩と言えるでしょう。運送事業者の皆様には、本記事で解説した内容をしっかりと理解し、適切に対応してください。法令遵守を徹底することで、事業継続のリスクを低減し、持続可能な運送事業の発展を目指しましょう。