巡回指導・監査サポート

巡回指導・監査サポート

料金
巡回指導・監査対策(1訪問120分) 33,000円

1.巡回指導とは

巡回指導とは、トラック事業が適正に実施されているかどうか、適正化事業実施機関の担当者が、運送事業所を巡回し、指導をすることをいいます。
運輸開始届を出して事業を開始すると、3~4ヶ月後(最近では約半年後)に適正化事業実施機関による巡回指導が行なわれます。それ以降は、おおよそ2年に1回程度回って来ます(期間は地域によって異なります。)
また、巡回指導は事業所(営業所)単位になりますので、営業所の新設や移転後にも行われます。

通常は適正化実施機関の担当者が2人一組(3人の場合もあり)で営業所を訪れ、「法に則った運送事業が行われているか」という観点から、さまざまな帳票類をチェックし、違反事項があれば指導し、そして改善が求められます。

巡回指導が行なわれる時は、事前(約1ヶ月前)に「巡回指導通知書」が郵送されてきます。指導日が通知されたら、巡回指導通知書に記載されている帳票類を準備しなければなりません。また、38個の指導項目をもとに行われ、実施状況によりA~Eの5段階で評価されて、DまたはE評価を付けられたときは監査(後述)の対象になります。

巡回指導に関しては、貨物自動車運送事業法第39条で定めがあり、「貨物自動車運送事業者は、地方実施機関から規定による求めがあったときは、正当な理由がないのに、これを拒んではならない」とあります。要は、運送事業者は必ず巡回指導を受けなければならないということが、法律で決められていることになります。

2.巡回指導と監査の大きな違い

事業者様の中には、「巡回」と「監査」を同様のものとみて、勘違いされている方が多く見受けられます。
「巡回指導」は、適正化事業実施機関が行い、運輸開始後、定期的に実施されるものになります。
一方「監査」は、国交省(地方運輸局)が行い、重大事故や通報等によって実施されるものになります。また、巡回指導時にA~Eの5段階評価の内、DまたはE評価となった場合は、営業所管轄の運輸支局へ通報され、監査の対象となります。

巡回監査
実施機関適正化運輸支局
処分なし(指導)あり
事前通告あり(約1ヶ月前)なし(実際にはあり)

3.巡回指導時における指導項目

(1)巡回指導でチェックされる38項目(大きく分けて7項目)
事業計画等

①主たる事務所及び営業所の名称、位置に変更はないか。(重点項目)
②営業所に配置する事業用自動車の種別及び数に変更はないか。
③自動車車庫の位置及び収容能力に変更はないか。(重点項目)
④乗務員の休憩・睡眠施設の位置、収容能力は適正か。
⑤乗務員の休憩・睡眠施設の保守、管理は適正か。
⑥届出事項に変更はないか(本社巡回に限る)。
⑦自家用貨物自動車の違法な営業類似行為(白トラの利用等)はないか。(重点項目)
⑧名義貸し、事業の貸渡し等はないか。(重点項目)

帳票類の整備、報告等

①事故記録が適正に記録され、保存されているか。
②自動車事故報告書を提出しているか。
③運転者台帳が適正に記入等され、保存されているか。
④車両台帳が整備され、適正に記入等されているか(車検証のファイル)。
⑤事業報告書及び事業実績報告書を提出しているか。(本社巡回に限る)

運行管理等

①運行管理規程が定められているか。
②運行管理者が選任され、届出されているか。(最重点項目)
③運行管理者に所定の研修(2年に一度)を受けさせているか(手帳で確認できる)。
④事業計画に従い、必要な員数の運転者を確保しているか。
⑤過労防止を配慮した勤務時間、乗務時間を定め、これを基に乗務割が作成され、休憩時間、睡眠のための時間が適正に管理されているか。(最重点項目)
⑥過積載による運送を行っていないか。(最重点項目)
⑦点呼の実施及びその記録、保存は適正か。(最重点項目)
⑧乗務等の記録(運転日報)の作成・保存は適正か。(重点項目)
⑨運行記録計による記録及びその保存・活用は適正か。(重点項目)
⑩運行指示書(2泊3日以上の運行の場合のみ)の作成、指示、携行、保存は適正か。(重点項目)
⑪乗務員に対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか。(最重点項目)
⑫特定の運転者に対して特別な指導を行っているか。(重点項目)
⑬特定の運転者に対して適性診断を受けさせているか。(重点項目)

車両管理等

①整備管理規程が定められているか。
②整備管理者が選任され、届出されているか。(最重点項目)
③整備管理者に所定の研修(2年に一度)を受けさせているか。
④日常点検基準を作成し、これに基づき点検を適正に行っているか。
⑤定期点検基準を作成し、これに基づき、適正に点検・整備を行い、点検整備記録簿等が保存されているか。(最重点項目)(3ヶ月、6ヶ月点検の記録。整備工場に預けている場合は、戻してもらう)

労基法等

①就業規則が制定され、届出されているか。(重点項目)
②36協定が締結され、届出されているか。
③労働時間、休日労働について違法性はないか(運転時間を除く)。
④所要の健康診断を実施し、その記録・保存が適正にされているか。(重点項目)
 (入社してすぐの方も受けてもらう)

法定福利費

①労災保険・雇用保険に加入しているか。(重点項目)
②健康保険・厚生年金保険に加入しているか。(重点項目)

運輸安全マネジメント

①輸送の安全に関する基本的な方針が定められているか。
②輸送の安全に関する目標が定められているか。
③輸送の安全に関する計画が策定されているか。
④運輸安全マネジメントの公表がされているか。

(2)巡回時の確認書類

①経営許可申請書
②事業計画変更認可申請書、届出書
③運転者台帳
④運行管理規定
⑤点呼記録簿
⑥乗務記録(運転日報)
⑦拘束時間管理表
⑧運行記録計による記録(チャート紙)
⑨運行指示書(2泊3日以上の運行がある場合のみ)
⑩運行管理者・整備管理者選任届
⑪運行管理者資格者証
⑫運行管理者研修(講習)手帳
⑬教育実施計画
⑭乗務員指導記録簿
⑮運転記録証明書又は無事故無違反証明書
⑯適性診断受診結果表
⑰事故記録簿
⑱自動車事故報告書
⑲事業報告書・実績報告書
⑳車両台帳・自動車車検証の写し
㉑整備管理規定
㉒点検整備記録簿(3ヶ月点検・12ヶ月点検)
㉓日常点検表
㉔賃金台帳
㉕健康診断書・健康診断記録簿
㉖就業規則
㉗36協定
㉘出勤簿
㉙労働保険加入台帳
㉚雇用保険加入台帳
㉛健康保険加入台帳
㉜総勘定元帳
㉝安全管理規定、安全管理規定設定届出書、安全統括管理者選任届出書(200両以上の本社のみ)

(3)そのほか法令で定められている項目

①利用運送事業(旧取扱事業)に関する届出事項、業務に変更はないか。
②特別積合せ貨物運輸に関する届出事項、業務に変更はないか。
③車体表示、運賃料金の届出等その他の項目が適正に行われているか。

(4)評価基準

巡回指導の結果、以下の5段階で評価がなされます。

A:適正に行われている項目が90%以上
B:80~90%
C:70~80%
D:60~70%
E:60%以下

※巡回指導の項目の最重点項目及び重点項目が「否」とされた場合は、1段階下の評価となります。

(5)巡回指導の結果

巡回指導の結果、指摘事項は改善し、期限(2ヶ月後)までに報告書を提出します。
改善報告書を提出しない場合、改善報告が届かない事業者として運輸支局に報告がされます。

(6)ポイント
  • 巡回指導で慌てることのないよう、日常の取組が一番重要です。輸送の安全にかかわることですので、巡回が有るなしに関わらず、意識を持つことが一番大切かと思います。全て安全運転のため。
  • 巡回指導は、担当者が直接営業所に来所しますが、その前に、車庫の状況もチェックします(立会不要)。そこで事業計画と一致していない(車庫にユニットが建っているなど)と、指摘を受けます。車庫が遠方の場合は、写真の用意も求められます。

4.監査対策

(1)監査の目的

運輸局によるトラック監査は「自動車運送事業等監査規則」と「自動車運送事業の監査方針について」という国土交通省の公示に基づいて行われています。
監査の目的は、「自動車運送に係る事故防止の徹底を期するとともに、運輸の適正を図ることを目的とする」とされており、事故防止のための施策です。

(2)監査の端緒(たんしょ)

監査の端緒とは、「国交省の監査が入る理由となる出来事」のことです。監査の端緒は国交省の監査方針公示で下記のように定められています。
(下記主なものを記載)

①適正化実施機関などからの情報などで法令違反の疑いがある場合
②事業用自動車の運転者が第一当事者と推定される死亡事故を起こした場合
③ドライバーが悪質運転(後述)を起こした場合、または起こしたと疑われる場合
④行政処分後の呼出監査拒否または改善を行わない場合
⑤適正化実施機関事業が行う巡回指導を拒否した場合
⑥都道府県公安委員会、都道府県労働局、道路管理者などからの通知または通報により法令違反の疑いがある場合
⑦労働関係行政機関又は日本年金機構から、労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険又は厚生年金保険に加入していない旨の通報があった場合
⑧労働関係行政機関から、最低賃金法に違反している旨の通報があった場合
⑨長期間、監査(街頭監査を除く)を実施していない場合
  ⑩その他事故、法令違反、事件、苦情等の状況を勘案し、監査を行うことが必要と認められる事業者

(3)監査の端緒で注意すべきポイント

①死亡事故を起こした他にも、ドライバーの訴えにより労基署の臨検監査が入り、拘束時間が長いなど、労基法違反が発覚すると運輸局へ通報され監査の対象となります。また、酒気帯び運転、ひき逃げ運転などがあると、即時に公安から運輸局へ通報がいきます。このほか、法令違反に関する第三者からの通報でも監査が入ります。
監査は突然入りますので、日頃から点呼、点検、報告書類の提出等、やるべきことはきちんとやっておくことが大事です(巡回指導でチェックされることと同様のものを確認します)。

②悪質運転とは?

悪質運転とは下記のとおりです。

  • 酒酔い運転
  • 酒気帯び運転
  • 過労運転
  • 薬物等使用運転
  • 無免許運転
  • 無資格運転
  • 無車検運行
  • 無保険運行
  • 救護義務違反(ひき逃げのこと)
  • 妨害運転(あおり運転のこと)
(4)監査の種類

①特別監査(トッカンとも言います)
死亡事故を起こした場合や、疑いのある法令違反の重大性を考慮し、厳しい対応が必要と認められる事業者に対して、全般的な法令遵守状況を確認するもの。

②一般監査
都道府県公安委員会や労働局からの通報等により、法令違反の疑いがある場合に行われる特別監査に該当しないもので、重点事項を定めて法令遵守状況を確認するもの。なお、一般監査を実施した事業者において、全般的な法令遵守状況を確認する必要があると認められた場合は、特別監査に切り替えられることがあります。
また、ライバル会社や、労働環境に不満を持って退職したドライバーからの通報も多く見られます。

③街頭監査
主にバス事業者に対してのもの。

 (5)監査の実施方法

運輸支局の担当者が事業所を訪れ、事業計画、運行管理、整備管理、社会保険の加入状況、賃金の支払い、名義貸し等の有無などを細かくチェックします。

(6)監査から行政処分までの流れ
1

監査(営業所への立ち入り

 1回で終わらない場合は、2回目も実施されます。
 原則として、無通告。尋問と帳票類の確認。

2

改善報告書(指示書)の送付

違反内容がほぼ確定されます。

3

弁明の機会付与の通知の送付(監査が行われてから、約2ヶ月~半年)

行政手続法により、不利益処分をする前に、弁明の機会付与の通知とほぼ確定の処
分内容が送られてきます。弁明をすることも可能です。

4

行政処分の決定通知 (弁明通知から約1ヶ月)

事業計画の変更(営業所や車庫の新設、移転など)が出来なくなります。

⇒行政処分(ナンバー領置)

5

処分終了

6

フォローアップ監査(処分終了から約2~3ヶ月)

(7)行政処分は点数制度

行政処分は、点数制度になっており、違反内容によって処分の重さ(基準日車)が
変わってきます。

①処分日数制度
違反項目により基準日車が決められています。監査で違反が指摘されると、その違反内容に対応した処分日車数が課されます。

「10日車」=1台のトラックを10日間動かしてはいけないこと
 
②違反点数制度
10日車につき1点が事業者ごとに、運輸局管轄区域単位で累積されます。100日車の処分があると、車両を延べ100日止められた上に、更に10点の違反点数が溜まります。この点数が管轄区域内で81点まで累積すると、許可の取り消し処分となります(その後欠格要件として5年間許可は取得できません)。
基本的には、3年間が累積期間となります。ただし、下記の場合は2年間に短縮されます。

  • 行政処分を受けた日より以前の2年間で行政処分を受けていない
  • 行政処分を受けた時点でGマークを取得している

③再違反、累違反
違反には「初違反」「再違反」「累違反」があります。
「再違反」とは、3年以内に同じ違反をもう一度すること。処分日車が初違反の
約2倍となります。
「累違反」とは、3年以内に同じ違反を2度以上すること。処分日車が初違反の
約4倍となります。

④ネガティブ情報の掲載
違反点数が20点を超えると、国土交通省のHPに会社名が掲載されてしまいます。

 (8)行政処分の種類

監査の結果、違反があると判断された場合に、行政処分が行われます。また、処分に至らなくても勧告、警告などもあります。

①自動車等の使用停止処分
トラックを動かすことを禁止する処分です。原則として、違反事業所等に所属する事業用自動車について処分日車数に基づき、6ヶ月以内の期間を定めて使用の停止を行うものとします。

②事業停止処分
事業停止とは、違反事業所で運送の仕事をすることが不可となることです。ただし、別事業や経理の仕事などはしても構いません(営業所を閉じる必要はありません)。
    
③許可の取消処分
営業許可が取り消される最も重い行政処分となります。

(9)運行管理者資格者の返納に関わること

下記の場合は、運行管理者資格者証を返納しなければなりません。

①運行の安全確保に関する違反が120日車以上の場合

②運行管理者が以下のいずれかを行った場合

  • 事業用自動車を運転した場合において、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物等使用運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転又は救護義務違反を行った場合。
  • 運行の安全確保に関する違反の事実若しくはこれを証するものを隠滅し又は改ざんを行う等これを疑うに足りる相当の理由が認められる場合。
  • 以下の違反行為を命じ、又は容認したとして都道府県公安委員会から道路交通法通知等があった場合。事業用自動車の運転者が過労運転、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物等使用運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転、過積載運行又は最高速度違反行為を引き起こした場合。
(10)行政処分後から監査終了までの流れ

①改善報告書を作成し、運輸支局に提出
②呼出監査 
③呼出監査の結果報告・監査終了 
④適正化事業実施機関の巡回指導

(11)行政処分後の事業計画変更の制約

①行政処分中 事業計画変更認可、増車は不可
②行政処分後3カ月間 増車は可、事業計画変更認可は不可

※行政処分が下りてしまうと、認可申請中の案件も取り下げとなります。