自動車運送業を営む上で必ず耳にするのは、運行管理者と整備管理者という存在でしょう。この二つは、自動車運送業の安全性確保になくてはならない仕事であるため、必ず事業所に設置することが定められています。
資格要件を満たす運行管理者と整備管理者を選任し、正しい手順を踏んで届け出なければいけません。
しかし、事業者様の中には、「運行管理者の名義を他の事業所から借りている」というような話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
果たして、そのようなことはできるのでしょうか。こちらの記事では、まず運行管理者と整備管理者とはどのような業務なのか簡単に説明した後、運行管理者と整備管理者の名義貸しは違法ですというテーマで詳しく解説いたします
運行管理者とは
運行管理者とはドライバーたちの指揮官です。具体的な業務は、過労運転とならないようなシフトや乗務記録の管理、業務前後の点呼でのドライバーの健康状態やアルコール摂取量の確認、休憩・睡眠施設の管理、安全運転のためのドライバーへの指導・教育などです。
運行管理者は、各ドライバーの安全運転に責任を負っている立場にあります。
整備管理者とは
整備管理者はどのような仕事なのかについて説明します。こちらは一言でいうと、点検の指揮官です。
具体的な業務は、日常点検の方法決定・実施、定期点検の方法決定・実施、点検結果に基づく必要な整備の実施、記録簿の管理、自動車車庫の管理、ドライバー・整備員への指導などです。整備管理者はあくまで点検を管理し責任をもつ立場にあります。
日々の点検業務を実際に行うことも可能ですが、毎日車両を安全な状態で使用するために、しっかりと点検が行われているか確認することがなによりも大切です。
運行管理者・整備管理者の名義貸しは違法です!
近年、運送会社の名義貸し違反の摘発が厳しさを増しています。名義貸しとは、実際にはその事業所で運行管理者・整備管理者の業務を行わないのにもかかわらず、運転管理者・整備管理者として選任されているという場合のことをいいます。このように、事業所外の有資格者から名前だけを借り、管理業務を怠った状態で営業していることが判明すると、名義を貸した側と借りた側両方に重い罰則が科せられます。
自動車運送業の安全性は絶対です。そのため、自動車運送事業法にはたくさんの厳しい罰則が定められています。運行管理者・整備管理者の名義貸しの場合、3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金(または併科)という罰則や、事業停止30日間という行政罰、10日車(違反車両を10日間乗務させない)という行政処分に処せられる可能性があります。特に、事業停止は名義貸しが発覚後すぐ適応することができます。
名義貸しが発覚し、重い処分となった実例を紹介します。2016年10月、関東運輸局が栃木県太田市の運送会社を監査した結果、5項目の違反があったとして、同社に処分を行いました。
その処分とは、30日間の事業停止と、延べ60日間の車両使用禁止というものです。許可取り消しに次いで重いこのような処分となった一番の要因は、運行管理者の名義貸しです。この運送会社では、社外の有資格者の名義を借りて届け出を行っていたため、点呼の実施や運転者に対する指導監督など、実際の運行管理業務がきちんとなされていなかったのです。加えて、名義を借りた側だけでなく、名義を貸した側の運行管理者有資格者に対しても、資格者証の返納が命じられました。
定められたとおりに社内に運行管理者・整備管理者を設置し、管理業務を行うことの大切さがお分かりいただけたかと思います。適切に運送業を営む事業所は、コストを費やしながらもきちんと運行管理・整備管理を行っています。
その一方で、ある事業所が運行管理者や整備管理者を設置せずにコストを削減しているのならば、不公平な運賃競争となってしまいます。適正な運賃収受のため、運輸局は不適切な名義貸しを厳しく取り締まっているのです。
おわりに
こちらでは、運行管理者と整備管理者の名義貸しは違法ですというテーマで解説いたしました。事業主様の中には、運行管理者や整備管理者の存在をないがしろにしてしまいたくなることもあるかもしれません。
しかし、ご自身の事業所を安心して営業するために、そして自動車運送業全体の安全性を向上していくためにも、運行管理者と整備管理者はきちんと基準通りに選任・設置し、適切な管理業務を行うようにしましょう。
名義貸し以外にもやってはいけないことなどあるのだろうかと不安になられた事業主様は、専門家である行政書士までお気軽にご連絡下さい。