自動車運送業を営む上で最も欠かせないことは何でしょうか。答えはずばり安全性です。近年、「トラック運転手が居眠り運転をして事故を起こした」「ドライバーの持病が悪化してしまい、危うく衝突しかけた」というようなニュースを耳にすることが少なくありません。
このような事故を未然に防ぎ、安全な自動車運送業を営むためには、車両の点検や整備は不可欠です。日々の点検は運転手の方々が行っているかと思いますが、点検を管理するという重要な役割を担うのが整備管理者です。
しかしながら、この整備管理者を選任や解任した際に届出をしなくてはいけないのを知らない方は少なくありません。
こちらでは、整備管理者を選任や解任したら届出が必要ですというテーマで詳しく解説していきます。
まず初めに、整備管理者の主な業務を見ていきましょう。
整備管理者の主な業務
具体的な整備管理者の業務を紹介します。
・日常点検の実施方法の決定 ・日常点検の結果に基づいて運行の可否の決定 ・定期点検の実施 ・日常点検や定期点検に加えて随時必要な点検の実施 ・点検の結果に基づいて必要な整備の実施 ・定期点検整備の実施計画の決定 ・点検整備記録簿等に関する記録簿の管理 (保存は使用者が当該自動車にて行う) ・自動車車庫の管理 ・運転手、整備員その他の者の指導、監督 |
簡潔に言うと、整備管理者は点検を取りまとめる役割を担います。毎日の点検を実際に行うのはドライバーの方々です。そのため、会社全体としての安全性は、個々のドライバーに委ねられているということになります。
そのため、誰か一人のドライバーが点検をないがしろにして事故を起こし、会社全体の信用を失う、となってしまう危険があります。このような事態を防ぐためにも、整備管理者が点検を統括することが不可欠です。
ちなみに整備管理者が実際の点検業務を行うことも可能ですが、あくまでも点検を取りまとめる立場であることに留意しましょう。
整備管理者になるには
誰でも整備管理者に選任できるわけではありません。では、具体的な整備管理者になる方法とはどのようなものなのでしょうか。その方法は2通りあります。
①資格による選任
自動車整備士技能検定を合格し、国家資格である整備士資格を取得した方は整備管理者に選任できます。この場合、実務経験は必要ではありません。
②実務経験による選任
*自動車の点検・整備・整備管理に関して2年以上の実務経験がある
*地方運輸局主催の整備管理者選任前研修を修了した
以上の2点の条件を満たしている方は整備管理者に選任できます。実際に整備管理者を選任する際は、②実務経験による選任を選ぶ事業者様が多く見受けられます。
選任や解任する際には届け出を!
整備管理者を選任したり、解任したりする場合は地方運輸支局に届け出が必要です。整備管理者選任等届出義務違反は法律により30万円以下の罰金が科されます。
また、整備管理者が退職し現場を退いているのにも関わらず、新しい整備管理者の選任届を提出し忘れた、というように整備管理者が誰もいないというような事態になってしまった場合、事業停止30日間という重い罰則が適応されます。
このような最悪の事態を防ぐためにも、整備管理者を選任・解任する場合は必ず届け出を行いましょう。
届け出のいろは
ここからはどのように整備管理者に関する届け出を行えばよいのかについて見ていきましょう。やり方が異なる部分もあるので、事業者様はご自身に当てはまる方法をよく確認してください。
何を届け出るのか
まず、新たに整備管理者を選任する場合、提出する書類はどの資格要件で選任したかで異なります。
①資格による選任
1.運行・整備管理者選任等届出書
2.取得している技能検定の種類を確認できる書面
(技能検定合格証書または自動車整備士手帳などがあります。)
3.整備管理者選任届出書に添付する書類
②実務経験による選任
- 運行・整備管理者選任等届出書
- 整備管理者選任前研修修了証明書
- 2年以上の実務経験を証明する実務経験証明書
- 整備管理者選任届出書に添付する書類
そして、整備管理者を解任する場合は、A. 運行・整備管理者選任等届出書に、解任する方の氏名・解任年月日・解任理由を書く欄がありますので、そちらを忘れずに記入します。特に選任と解任がどちらも生じる場合は注意が必要です。選任する方の情報だけ記載し、解任する方の情報を記載し忘れると、運輸局のデータに誤って登録されてしまいます。事業者様は必要な記載事項を丁寧に確認しましょう。
いつ届け出るのか
整備管理者を選任または変更した場合は、15日以内に届け出をするよう法律で定められています。手続きがうまくいかないと、整備管理士が誰もいないという事態になりかねませんので、届け出は早めに行いましょう。
まとめ
今回は整備管理士とはどのような仕事なのか、そしてその選任や解任の際には必ず届け出が必要ということで、整備管理者を選任や解任したら届出が必要ですというテーマで詳しく解説いたしました。
整備管理者を選任、解任する際は、必要な書類をそろえ、すぐに届け出を行いましょう。
よくわからない方や不安な方は専門家である行政書士にお気軽にご連絡下さい。