一般貨物と特定貨物自動車運送事業許可の違いについて
貨物自動車運送事業には、「一般貨物自動車運送事業」と「特定貨物自動車運送事業」、「貨物軽自動車運送事業」の3つの事業があります。
「貨物軽自動車運送事業」は、その名の通り、軽自動車を使って、不特定多数の荷主から運送の依頼を受けて、運送する場合が「貨物軽自動車運送事業」になります。
では、一般貨物と特定貨物自動車運送事業許可の違いはどのような点にあるでしょうか。
1.一般貨物と特定貨物自動車運送事業許可の違い
「一般貨物自動車運送事業」とは、トラックを使用して不特定多数から運送の依頼を受け、荷物を運送し、運賃を受ける場合のことを指します。
一方、トラックを使用して単一特定の荷主から運送の依頼を受け、荷物を運送し、運賃を受ける場合が、「特定貨物自動車運送事業」です。
貨物軽自動車運送事業は届出制ですが、一般貨物と特定貨物は、どちらの事業も許可制になります。
この2つの違いは、①単数の者に特定され、当該荷主の輸送量の大部分の輸送量を確保できるものであること、かつ②運送契約の締結及び運送の指示を直接行い、第三者を介入させないものであることを満たす場合は「特定貨物運送」、それ以外は「一般貨物運送」となります。
もう少し詳しく言うと、「特定貨物自動車運送事業」とは、以下のものをいいます。
①単数の者に特定され、当該荷主の輸送量の大部分の輸送量を確保できるものであること
・当該荷主が宅配便等一部小口貨物を依頼している場合を除いてその荷主の総輸送量の80%以上の取扱いが可能であること
②運送契約の締結及び運送の指示を直接行い、第三者を介入させないものであること
・常時、他の運送事業者による一車貸切輸送が行われていないものであること
2.一般貨物と特定貨物自動車運送事業許可の要件
許可要件については、以前は許可要件に違いがありましたが、現在は一般貨物と特定貨物はほぼ同じです。
もっとも、特定貨物自動車運送事業の許可は、特定の運送需要者に付与するものなので、既にこの許可を取得した事業者が、特定の運送需要者を新たに追加する場合は、特定貨物自動車運送事業の廃止及び一般貨物自動車運送事業の許可申請手続が必要になります。
したがって、そのような場合が生じると、時間もお金も無駄になってしまいます。そのため、現在は「特定」で許可を取らずに、「一般」で申請される方がほとんどとなっています。
許可に関しては以下の要件を満たす必要があります。
①申請者や会社の役員が1年以上の懲役又は禁錮を受けてから5年経過していないなどの欠格要件に該当しないこと
②運送事業に専従する常勤の役員うち1名が法令試験に合格すること
③必要な有資格者を配置すること
営業所ごとに、定められた人数の「運行管理者」、「整備管理者」を配置しなければなりません。
④必要な人数の運転者を選任すること
営業所ごとに使用権限を有する車両を5両以上有し、運転者も5名以上必要になります。常時選任運転者はトラックの台数以上雇わなければいけません。
⑤営業所が確保されていること
建物が都市計画法、建築基準法、農地法等の法令に抵触していない営業所が必要です。
⑥休憩・睡眠施設があること
睡眠を与える必要がある場合は、1人あたり2.5平方メートルの広さを有することが必要です。
⑦営業所に併設または一定の距離内に、全車両が収容できる車庫があること
営業所に併設することが原則ですが、併設できない場合は一定の距離内に、一定の間隔を取って全車両が収容できる車庫を置く必要があります。
⑧必要な数の車両数があること
営業所ごとに、運行に必要な車両を5台以上確保することが必要です。
⑨所要資金
所要資金の調達に十分な裏付けがあること、自己資金が次により算定した所要資金に相当する金額以上であること等資金計画が適切であることが求められます。
例えば、人件費・燃料費・油脂費・修繕費の6ヶ月分の運転資金、自動車重量税、自動車税、保険料各1年分を所要資金として算出します。
⑩所要資金の常時確保
所要資金の全額以上が、申請日以降常時確保されていることが必要です。
⑪損害賠償能力
100両以下の自動車で事業を行う場合は、「対人無制限・対物200万円以上」の任意保険に加入する必要があります。
3.まとめ
一般貨物自動車運送事業と特定貨物自動車運送事業との違いは、簡単に言うと単数の者に特定されるか否かということになります。
許可要件は同じであるものの、特定貨物自動車運送事業の許可は、特定の運送需要者を新たに追加する場合は、特定貨物自動車運送事業の廃止に加えて、一般貨物自動車運送事業の許可申請手続が必要になります。
したがって、時間とお金を節約する観点から、現在では「特定」で許可を取らずに、「一般」で申請されることをお勧めします